大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)10255号・昭39年(ワ)11240号・昭39年(ワ)1516号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕妾関係は民法の規定する一夫一婦制の婚姻秩序に反し、法的保護に値しないことは第一(三)において認定したとおりである。しかし妾関係の維持継続のためになされた財産的利益の供与であつても、これを全く法的保護の外に放置することは社会的経済的に強者の立場にある男性の恣意を助けて、弱者の立場にある女性を不当に無視する場合を生ずることになり、かえつて社会的正義に反する結果になりかねない。いいかえれば、かかる財産的利益の供与も妾の生活を維持するために最小限必要な範囲においては、公序良俗に反しないものとしてその法的効力を認めるのが、社会的に妥当性をもつものといえよう。本件においては、贈与契約が公序良俗に反する無効のものであることは先に判断したとおりであり、前記第一(三)認定事実に照らし、平三と原告との間に右贈与契約とは別に本件家屋の使用貸借契約が締結されたとは窺えないけれども、右贈与契約の趣旨は、原告主張のように原告をして本件家屋において理容業を営ませ、その生計を立てさせる意図を含んでいたことが明らかであるから、贈与契約としては無効であつても、本件家屋を原告に無償で使用させる契約としては有効に成立したものとして、無効行為の転換を認めることが当事者の契約目的にも合致し、又社会的に妥当性をもつものである。ただその場合、平三と原告との使用貸借は、両者の妾関係を前提として成立しているものである以上、原告が妾である限りその建物を利用して生治を維持させるための使用貸借という他なく、かかる場合妾関係の消滅に拘らずその建物を使用できる趣旨とは解し難いから(相手の男性が不当に妾関係を破棄した場合の明渡請求が権利の濫用になるかどうかは別として)、相手の男性死亡後建物の利用関係だけを存続させ、その男性の正当な相続人からの明渡請求を拒むことはできない。結局右使用貸借契約は、妾関係の継続を存続期間とし、従つて妾関係の終了を返還期限とするものであつて、昭和三九年二月六日平三の死亡によつて終了し、返還期限が到来したものというべく、被告らの再抗弁は理由がある。(竹田稔)

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